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伝統の継承とオリジナリティの追求8代目が語る「水の平焼」とは

2023.02.22

※掲載内容は公開時点のものです。ご利用時と異なることがありますのでご了承ください。

#体験 #天草陶磁器 #本渡町 #水の平焼 #美容・雑貨

こんにちは!アマカラ編集部の荒木です!

「水の平焼」は、天草本渡町にある県内で最も歴史のある窯元のひとつです。

その伝統ある「水の平焼」の8代目岡部祐一氏にインタビューをおこないました。

商品のこだわりや作陶以外の取り組み、今後の夢などについてお伺いしました!

「水の平焼」の8代目岡部祐一氏にインタビュー

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歴史のコピーではなくオリジナリティを大切に

 水の平焼外観

ー水の平焼とは

1765(明和2)年江戸時代に岡部常兵衛氏によって創業。
1877年、内国勧業博覧会で花紋章牌を受賞して全国的に「水の平焼」が有名になりました。

その特徴は初代より海鼠(なまこ)釉を用いた食器や茶器などを制作し、5代目の赤海鼠が水の平焼の特色となり現在に至ります。
陶器は青海鼠、磁器は赤海鼠を使用しています。

鉄釉と藁灰釉の2色の釉薬をかけてできた海鼠釉の独特の色の深みと複雑さは水の平焼の特徴です。

 

水の平焼窯元

―家業なので引き継いだと思うのですが迷いなどありませんでしたか?

そうですね。迷いはなかったと言えばうそになりますが、大学進学時に京都精華大学で陶芸について学んでから決めようと思いました。
実際に土に触ったり、ものを作ってみて自分に合っていたので卒業後帰郷して家業に入りました。

 

水の平焼

―仕事の大変なところを教えてください

20代の頃は何を作っていいか分からず苦労しました。
当時はバブル後で物が動かない時だったのもあり、何を作れば売れるのか悩んでいましたね…。

水の平焼は歴史がありますがコピーを作っていくだけではダメなんです。
自分のオリジナルをどう展開していくべきかひたすら考えていた気がします。

その結果、茶碗やリム皿のサイズ展開を増やしたり型物以外の手で作るものに関してはオリジナルのサイズ展開を始めました。

今までやってこなかったことを新たに始めることが重要だと思ったんです。

あと、大変なところは原料調達。
粘土を西の久保という場所で年に3~4回ほど取りに行くのが一苦労です。

※リム皿…「リム」とはお皿の一段上がった縁の部分のこと

 

茶碗やリム皿のサイズ展開

―仕事をしていて嬉しいことは?

やはり売れた時です!
店頭販売はお客さんとお話もできるので楽しいですね。

今年の11月2日から開催された天草大陶磁器展で、東京からいらっしゃった方が商品を購入してくださいました。
そのとき、NHKの天草特集の再放送を見て来たとおっしゃっていて…。

直接商品を手で触れることができて喜ばれていましたし私もそんな声を聞けて大変嬉しかったです。

 

 茶碗やリム皿のサイズ展開

―仕事の悩みはありますか?

1人で仕事するようになって質を落とさずに効率よく作れないかと試行錯誤しています。
代々受け継がれてきたやり方を守っているので手間なことが多いんですよ。
でも改善できるところは改善していっています。

 

 小学生との交流

ー作陶以外で何か取り組まれていることなどありますか?

学校との取り組みです。
天草市内の小学校2∼3校が社会の副教材として水の平焼きを学ぶ授業があり、歴史や作り手を学ぶために見学に来てくれます。

また、天草市内の6年生を対象に子ども作陶も実施しています。
市内の窯元と協力して各小学校に出張し、陶芸体験を行っています。
子どもたちはとても楽しそうに取り組んでいますよ。

出来上がった完成品を市の教育会館に展示するんですが、展示後は子どもたちの手元に返却します。

これは10年以上続いている取り組みですね。

地域交流にも積極的に参加しています。
瀬戸と天草交流連携協定を結んだことをきっかけに瀬戸祭りへ足を運ぶなど様々なイベントに参加しています。

実は天草と瀬戸には深いつながりがあります。

瀬戸の磁器を改良し、その功績から磁祖と言われた加藤民吉は、天草の高浜焼で修行しています。
その技術を瀬戸に持ち帰ったことで瀬戸の磁器生産は急激に発展したんですよ。

まさに磁器の神様です。

 

水の平焼 菊皿

―菊小皿を作ろうと思ったきっかけや難しさがあれば教えてください

きっかけは分かりませんが先代からの定番商品なんです。

これは型が1個しかなく乾かしながら作業しているので、時間がかかり大量に作れないのが難点です。

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水の平焼

―今後の夢はありますか?

まだまだ作りたいものがあり、自分のイメージに近付けていく作業を行っていきたい。

歴史が長い分、過去にさまざまな作品が作られています。
歴代のものを掘り起こし試行錯誤しながら何かオリジナルの作品を作ることができればいいなと思います。

また、調合を研究して赤海鼠を安定させること。

極力素材や原料のロスを無くすために釉薬の新たな調合レシピを作ったりなど、以前よりロスが出ないように調整していくことも課題のひとつです。

そして、夢とまではいかないのですが展示スペースを新しくリノベーションしたいですね。

時代と共に需要も変化していて、今では日常で使用する食器類を求めて観光に来る方も多くなってきたので展示スペースをリニューアルして販売する環境を整えていきたいです。

6代目までは容器の注文制作が主で店頭販売にはほとんど力を入れていなかったので…。

「水の平焼」を取材して・・・

 

まず、水の平焼きの入口にある大きな壺は岡部さんの大学の卒業作品だそうです。
訪れた方はぜひ注目してみてください。

小豆カフェのスイーツ

また岡部さんはスイーツもお好きなようで、おすすめのカフェは「小豆カフェ」とのこと。
誕生日やクリスマスはいつも小豆カフェのケーキを購入するそうですよ!

歴史ある窯元の8代目として守り継がれてきた釉薬を使いつつ、試行錯誤しながらオリジナリティを追及されている岡部さん。

地元の小学校との職場体験や作陶体験、他都市との地域交流など、天草陶磁器ひいては天草のこれからのために社会活動にも積極的に取り組まれている姿勢に感銘を受けました…。

取材中、関東からのお客様に「他の窯元でしたら○○がおすすめですよ。」と他の窯元の場所や商品の特徴など丁寧に説明されていました。

一方で、お気に入りのカフェのケーキの話を楽しそうに話される可愛い一面もあり、とても楽しい取材をさせていただきました。

このような素敵な岡部さんが引き継ぐ、伝統ある水の平焼きのさらなる飛躍に期待大です‼

名称

水の平焼

所在地

〒863-00024
天草市本渡町本戸馬場2004

営業時間

9:00~17:00(年中無休)

電話・FAX

0969-22-2440

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