すし屋などでも一年中美味しく食べられるウニ。
ウニも他の食材と同じく旬の時期が限られていますが、なぜ一年中食べられるのでしょうか。
それはウニの種類の違いにあります。
熊本県天草は球磨川をはじめとするミネラル豊富な川の水と新鮮な海水が入ってくる外洋に面した地域です。地形が育むウニの美味しさは全国でも有名なブランドとして認知が広がっていきました。
熊本県天草諸島でも時期によって食べられるウニは異なりますが、どのような種類のウニが生息しているのでしょうか。詳しく解説していきます。
天草の絶品うにを味わいたい方におすすめ
ウニはどんな生き物か
日本で食用として流通しているウニは数種類ですが、食用以外のものを含めると日本近海に生息しているだけで約160種類と言われています。
ウニはヒトデやナマコと同じく棘皮動物(きょくひどうぶつ)に分類されています。
棘皮動物は水管系で呼吸から運動・排泄までを行い、五放射相称形という特徴的な形状をしています(丸く見えるウニですが、棘をなくすとよくわかります)。
棘皮という名の通り、体表面にとげのような突起物があるのも特徴の一つです。
ウニの表面もとげで覆われており、硬い殻で包まれていますが、内部のほとんどは体液でできています。
ウニのとげは移動や外敵からの防御の機能があり、口側のとげは移動用、反対側のとげは防御に用いられます。加えて視覚器官の役割も果たしています。
可食部
普段、食用として利用される部位はウニの生殖巣にあたる部分です。
卵巣あるいは精巣ということになりますが、顕微鏡を使わない限りその区別はつきません。
生殖巣の大きさはウニの種類によって異なりますが、殻内部のほとんどを占めています。
天草で獲れるウニの種類
天草で獲れるウニは季節によって違いがあります。
春はムラサキウニ
夏はアカウニ
秋から冬はガンガゼウニ
が旬となります。
ムラサキウニ
ウニを想像した時に最初に思い浮かぶのがムラサキウニの姿ではないでしょうか。
日本国内では本州中部から九州にかけて生息し、最も普通にみられるウニの種類です。
天草では3月初旬頃から5月中旬頃まで漁が解禁されるムラサキウニ。
天然の生ウニと言えば旬は夏というイメージですが、ムラサキウニの旬は春です。
一見黒っぽく、直径約5~6cmで、殻は円形、とげが長いのが特徴です。
太陽にかざしてみると濃い紫色であることが分かることからムラサキウニという名が付いています。
天草では、西海岸側の牛深などで、素潜りにより水揚げされ、生や塩漬けの瓶詰にして出荷後に地元の漁協や各店舗に卸されています。
首都圏などでも広く流通しているものに「キタムラサキウニ」がありますが、北海道周辺から東北地方に生息している別種となります。
キタムラサキウニは夏が旬となり、ムラサキウニと聞いてこちらをイメージする方も多いでしょう。
実の特徴としてはアカウニと比べると小ぶりです。
味わいは濃厚でしっかりとしたコクがあり、独特の磯の香りのある風味を感じることができます。
産地によって味に違いもあるのがムラサキウニの特徴です。
生食や一汐加工(ひとしおかこう)のほか「うにのあえもの」を造るのにも適した種類のウニです。
アカウニ
東京湾から南方、特に九州沿岸の西側に生息する温帯性のウニです。
他のウニとは産卵期が異なり、10月~11月頃です。
直径約5~8cmで、殻は扁平形、短く赤っぽいとげが特徴で、主に産地での需要が高く、ほとんどが九州で消費されます。
九州外にめったに出回らないことから「幻のウニ」とも呼ばれています。
北海道でもアカウニと呼ばれる種類がありますが、オレンジ色の身をしたエゾバフンウニのことを指し本種とは別物です。
アカウニはムラサキウニと比べて深い水深に生息しており、岩下などに潜りこんでいます。
熟練した漁師さんでも獲るのは難しく、さらに少しでも傷つけてしまうと、自ら死んでしまうデリケートな生態を持っています。
アカウニは強く濃厚な甘みが特徴で、ウニといえばアカウニを挙げる人もいるほど高い評価を受けています。
さらに漁獲量が他のウニよりも少ないことから高級食材としても知られています。
ガンガゼウニ
日本では房総半島・相模湾以南で見られるウニです。
ほとんどは潮下帯の大きな岩下などの物陰に生息しています。
殻は薄くて脆く、直径5~9cm程ですが、長いもので30cmもあるとげに覆われているのが特徴です。
また、ムラサキウニなどのとげは人体にささりにくく、ほとんど深い傷にはなりませんが、ガンガゼウニの場合、鋭く細いとげが容易に人体に突き刺さります。
さらに全てのとげが有毒で、とげの表面には逆刺があり、とげ本体は折れやすいため皮膚内部に残ることが多く、激しい痛みを起こします。
食用ですが常食されていないため、全国的には食用のウニというより海水浴場で気を付けるべき生物としてのイメージが強いかも知れません。
天草のガンガゼウニは、甘みや旨味などはムラサキウニなどと比べると淡泊ですが、クセも臭みもなくまろやかであっさりした味わいです。
ウニは種類が豊富
ウニは種類が多く、国内で食用とされるものだけでも
ムラサキウニ
キタムラサキウニ
バフンウニ
エゾバフンウニ
アカウニ
ガンガゼウニ
など様々です。
そして、その種類によって旬が分かれるだけでなく、ウニ類は同じ種類であっても生息する地域によっても旬の時期が細かく分かれるという特徴があります。
結果として天草は一年中ウニを美味しく食べることができています。
日本三大珍味としてのうに
古来より日本においてウニは三大珍味に数えられます。
これは生食のウニではなく、塩雲丹(しおうに)と呼ばれる加工されたウニのことです。
現代の日本では刺身や寿司ネタ、海鮮丼・うに丼などで生食をすることが多く、鮮度が重要視されています。
天草のウニが美味しい理由
天草近海には栄養豊富な海藻があります。
天草の海の上流には、阿蘇や久住の山々の森が広がっており、その森で育まれた沢山のミネラルが、福岡の筑後川、熊本の白川・緑川などの河川を伝って運ばれてきます。
海に運ばれてきたミネラル分はプランクトンを生み、海藻を育て、海の生物にとって大事な栄養源となっていきます。
また天草の海は干満の差が3M以上と大きく、潮の流れが速い海でもあります。
そのため運ばれてきた栄養が海の隅々まで行きわたり、豊かな海藻や魚介が育ちます。
また産地ではミョウバン処理など保存料が一切使用されていないウニを食べることができるため、ミョウバン独特の苦みを感じることはなく「ウニ嫌いの人もウニ好きになる」と言われています。
種類ごとに味わい方を変えて楽しむ
普段は寿司のネタや料理のアクセントとしてウニを食べていますが、どちらの食べ方のウニが最もおいしいかは味の好みによって個人差があります。
旬の時期が異なる数種類のウニを食べ比べて、自分が最も美味しいと感じるものを探してみるのも良いでしょう。
天草まで行くことが難しい方は、まずは通販サイトなどでお取り寄せしてみるのも 良いと思います。
ウニから摂れる栄養素
ウニは比較的コレステロールが多い食材として有名ですが、100gあたり290mgと、卵(100gあたり420mg)や鶏レバー(100gあたり370mg)と比べるとそれほど高い数値とは言えません。
※日本食品標準成分表より
また、一度に大量に食べる機会も少ないため、コレステロールなどを取りすぎる心配もないと言えます。
脂質 DHA・EPA
ウニに含まれる代表的な栄養素は脂質です。
DHAは正式名称をドコサヘキサエン酸といい、必須脂肪酸と呼ばれる栄養素のうち、オメガ3系脂肪酸に分類される脂肪酸です。
人間の体内ではほとんど作られないため、食べ物から摂取する必要があります。
脳の働きを活性化する効果があるとされており、集中力や記憶力を高める効果が期待できます。
EPAは正式名称をエイコサペンタエン酸といい、DHAと同じく必須脂肪酸の一種です。
EPAは血中の中性脂肪や悪玉コレステロールを減らし、血液を健康に保つ働きをもつことで知られています。血栓をできにくくし、高脂血症や動脈硬化などを防いだりする効果が期待できます。
これらは同時に摂取することで健康効果を高めることができるとされており、ウニには両方含まれているため高い健康効果を期待できます。
ビタミン B群・E
ビタミンB1やB2、B12などのビタミンB群も摂取することができます。
ビタミンB1は体内の糖質を燃やし、エネルギーを生み出すために欠かせない栄養素です。
糖質の多い食品・お酒をよく摂取する方にぜひ取り入れてほしいものです。
ビタミンB2は皮膚や粘膜の健康を維持する役割を持ちます。
ビタミンB12は動物性の食品に多く含まれており、神経機能を正常に維持する働きもあるため、うつ病を予防する作用があるともいわれています。
ビタミンB群は水溶性のビタミンなので、摂取してから一定の時間が経過すると、水分とともに体外へ排出されてしまいます。
そのため、過剰摂取による副作用を起こす心配はほとんどありません。
そのかわり、一定量の水溶性ビタミンを体内に留めておくためには、食事などから定期的に摂取する必要があります。
ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種です。
抗酸化作用を持ち、老化の原因にもなる活性酸素の働きを抑えます。
ビタミンEをしっかり摂取することで脂質の酸化を抑制し、心筋梗塞や動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果が期待できます。
カロテン
ウニは動物ですが、植物に多いカロテンも豊富に含まれています。
カロテンは体内でビタミンAとなり、活性酸素を抑えて生活習慣病を予防するとともに、皮膚や粘膜の細胞を正常に保つ働きがあるとされています。
アミノ酸
アミノ酸はたんぱく質を合成する際に欠かせない栄養素です。
確認されているもので、自然界には500種類程のアミノ酸が存在しますが、人間に必要なたんぱく質を構成するのは20種類です。
アミノ酸には体内で合成できるものと、合成できないものがありますが、身体の健康維持のためにはどちらのアミノ酸もバランスよく必要です。
タウリン
タウリンは、体内のタンパク質がアミノ酸に分解される過程で生まれます。
心臓や肝臓の機能を高める働きがあることから、二日酔いや高血圧を予防する効果が期待できる栄養素です。
また、疲労回復効果も認められており、栄養ドリンクなどにも配合されています。
タウリンは人間の体内で生成できるものの、必要量に届かないため、毎日の食事から摂取する必要があります。
万が一、多量に摂取してしまっても、余剰分は体外へ自然と排出されるため、不足しないよう継続して摂取することが大切です。
注意点
ウニには100gあたり137.3mgのプリン体が含まれています。
食べ物に含まれる旨味成分の一つですが、プリン体を摂取しすぎると代謝でできる尿酸が血液中に増加・蓄積し、痛風などの症状を引き起こします。
また、塩で加工された粒ウニや練ウニの場合、塩分量は生ウニの10倍以上です。塩分の摂りすぎによって、高血圧やむくみなどの症状を起こすため、ウニを食べる際は適量を心がけて楽しみましょう。
美味しいウニで栄養をとる
ウニには健康維持のために欠かせない栄養素が豊富に含まれています。
一度に大量に食べる機会もないため、過剰摂取などの心配も必要ありません。
美味しいウニで身体に必要な栄養素を摂取しましょう。
日本食品成分表より抜粋
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10365_7
天草の絶品うにを味わいたい方におすすめ