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「器峰窯」は二人三脚で新しい挑戦を続けます
こんにちは!アマカラ編集部の荒木です!
こちらでは、アマカラおすすめの商品とそのお店のこだわりや想いなど、取材してきた内容をご紹介していきます。
今回は、水の平焼の伝統を継承しつつ、天草陶石を使った磁器を制作する「器峰窯」の岡部俊郎(としお)さん・綾子さんご夫婦に椿と四角の「豆皿」や、れんげのような「味見小皿」、ミニチュア磁器の制作をはじめ、夫婦で作業される際の関係性や今後の目標など、さまざまなお話を伺いました。
器峰窯のはじまり
(荒木)まず俊郎さんは、どのような経緯で現在の仕事を始められたのですか?
父が水の平焼7代目岡部信行ですので、幼い頃から焼き物に触れる環境で育ったことが大きいですね。
小学生の頃には、ムツゴロウの箸置きを作って、それを売ってお小遣いにしていました。
過去を振り返ると、ごく自然な流れで今の仕事をしているなと思います。
有田窯業大学校(2018年度をもって閉校)で学び、卒業後は長崎県波佐見町で3年間修行していました。
2002年に天草に戻って、10年ほどは家業を手伝っていました。
2013年に独立し「器峰窯」を開窯。
今の仕事を始めて9年ほど経ちました。
-学校卒業後も学びを深めていたんですね。
綾子さんはどのような経緯で?
私は長崎県出身なんです。
有田窯業大学校では、本科で2年間、絵付科で1年間学びました。
その後、波佐見焼で3年働いて、一度長崎の実家に帰っていました。
天草に来たのは結婚がきっかけです。
こちらに来てしばらくの間は、陶磁器関係の仕事はしていなかったんですけど、義父(7代目岡部信行)から磁器の陶板に絵を描く企画があるから絵付けをしてみないかと声をかけていただいたんです。
制作してみると充実感を感じられたので、器峰窯の絵付けを始めることにしました。
その時の作品は、現在も旧苓北物産館に飾られています。
ちなみに、磁器の陶板に絵を描く企画というのは「アズレージョ」というもので、旧物産館には他の窯元さんの作品も飾られています。
アズレージョというのはポルトガル語で、ポルトガルやスペインで作られる釉薬をかけて焼いたタイルのことなんです。
アズール (azul)というのが「青」や「青い」を意味するポルトガル語なんですが、作品も青を基調としたものが多く、とても綺麗です。
-7代目がお二人で仕事を始めるきっかけになっているんですね。
次に器峰窯について教えてください。
天草陶石が発見されたのは1700年代初期で、平賀源内を「天下無双の上品」と言わしめるような素晴らしい素材なんです。
砕きやすくて、成形しやすい。
それなのに、地元では天草陶石を使って磁器を作っているところが少なかったんです。
磁器の良さを伝えたいと思い、器峰窯を作りました。
器峰窯では磁器を手作り手描きで作っていますが、天草では他に久窯さんだけで、珍しい作り方なんです。
二人三脚で歩む道のり
お二人の仕事の役割はどのように分担されていますか?
私が成形して、妻が絵付けをします。
ただし、あくまでも基本的な分担であって、こちらから絵付けのイメージを伝えることもありますし、妻の方から形のリクエストがあることもあります。
夫婦二人三脚で作品が生まれているんです。
素敵ですね。
作品を作る中で大変なことはありますか?
それぞれの役割で違うとは思いますが…
成形するときに難しいのは、牛べらを使って成形することです。
成形するために使う地方もあれば、伸ばすために使う地方もあるので、用途はさまざまです。
私の場合は、少ない手数で土を大きく伸ばすために使っています。
あとは、冬の寒い時期は釉薬をかけるのが辛いですね。
霜焼けになってしまうこともあります。
私は絵付けなので、イメージ通りに仕上げられるかどうかというのが難しいと感じるところです。
それでも、お客様から「よく使っています」と言ってもらえたときには、そんな大変さも吹き飛ぶくらい嬉しいです。
私たちの作った作品がお客様の生活に馴染んでいるんだなと思うと、頑張ってよかったと思えます。
《オススメ》形にも、色にもこだわった『豆皿(椿)』
それではいくつかの商品について教えてください。
まずは椿の「豆皿」ですが、作ることになったきっかけやこだわりは何ですか?
最初は海で拾ったおにぎりの形をした石を使って型取りをして、そのまま売っていたんですがなかなか売れず…。
どうしたものかと思って眺めていたら、椿っぽいなと思い始めたので、少し形をいじってみたり絵付けをしてみたり、工夫を加えてみたんです。
普段の絵付けには青色以外の色をつけることはほとんどないのですが、今回は黄色を入れてみたりして、椿のお花の感じがより伝わるようにしてみました。
《オススメ》古典的な柄も楽しんでもらいたい『豆皿(四角)』
-次に四角の「豆皿」ですが、こちらにはどんなこだわりがありますか?
最初はコースターをイメージして作っていたのですが、さまざまな使い方ができるなと。
形は四角ですが、まずろくろで丸く作ってから周りをカットして四角にしています。
網目模様は漁で使う網を図案化したもので、「大漁」とか「一網打尽」とか「幸せを捉える」という意味を思わせるような縁起の良い柄にしています。
網目柄は「邪気を通さない」とされていて、疫病避けや魔除けの意味合いでも親しまれています。
絵付けにもこだわっているんですね。
古典柄が好きなので、昔から愛されてきた飽きのこない絵付けを大事にしています。
古典柄は縁起の良い意味を持つものが多いので、思いを込めやすいということもあります。
例えば、七宝紋は、円形が永遠に連なる柄に「円満」「調和」「御縁」などの願いが込められています。
古典柄は奥深いですよね。
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《オススメ》納豆好きにはたまらない『納豆鉢』やアイデア商品の『味見皿』など素敵な商品がいっぱい!
絵付けのこだわりは興味深いものがありますね。
他のおすすめの商品についてもお聞かせください。
生活に寄り添う身近なアイテムを作りたいと思っているので、まだ改良中ですが、れんげの形をした「味見皿」です。
突起しているのでつまみやすいんです!
エビが描かれているものと、七宝紋(しっぽうもん)があります。
私は納豆好きなので納豆鉢を作りました!
ろくろは使わず手捻りで作ったので、形や大きさに違いがあります。
納豆パックが3〜4つ入るくらいの大きさです。
牡丹唐草柄と鎬(しのぎ)柄の2種類があります。
シルバーアクセサリーと陶石を使ったアクセサリー作りを習いに行って、どれくらい小さいのが作れるかなと思ってミニチュアの制作も始めたんです。
カップアンドソーサーのアクセサリーを作ったり、ドールハウス用の依頼もありました。
蕎麦猪口も作っています。
私が若い時から好きな形で、高校の時にはファッション雑誌よりも蕎麦猪口の載っている雑誌を見ていました。
ですので、絶対蕎麦猪口は作りたかったんです。クジラやジンベイザメ、ネコなどの柄もありますし、古典柄の絵付けもしているので写したりするのも勉強になるんです。
今後の取り組みについて
最後に、今後の取り組みについて考えていることはありますか?
これからも二人で楽しみながら作品を作り続けていけたら良いですね。
個人的には、磁器も焼き方によってガラス化するという土の特性を生かして、照明などの作品を作ってみたいと思っています。
最近はイベントへ積極的に出店しています。
自分たちの世界観を伝えやすいですし、お客様の目に触れる機会を増やしています。
また、倉庫を見ていたら先祖が使用していた形やデザイン画も出てきたので、それらを使った作品も制作していきたいと思っています。
時代を超えてお客様の手にとっていただけるのが嬉しいですね。
取材を終えて
ご夫婦揃ってお会いするのは今回が初めてでしたが、とっても明るく楽しい奥様で、カフェでお茶をしにきたかのようなリラックスした雰囲気での取材でした。
水の平焼という歴史ある窯元で、その伝統を継承しながら新しい窯として夫婦二人三脚で作品作りを行なっている「器峰窯」には、お互いのアイデアを尊重しながら二人で楽しく仕事をしているのが浮かぶような素敵な作品が並んでいました。
納豆が好きで作った納豆鉢や、ご主人のアイデアから生まれた現在改良中の味見皿、奥様が学生時代から好きな蕎麦猪口など、気になる器がたくさんあり、あまからの商品企画の想像が膨らみます。
俊郎さんは公募展にも積極的に出展されていて、現在は日本民藝館展(新作工芸公募展)に出展しています。
2022年度の奨励賞を受賞され、意欲的に作品を作られているので、今後の器峰窯に期待大です!
ご主人のInstagram(okabetoshio)には、奥様が長崎に帰省している時に作った「オカベーコン」のお話など、自然体で発信されていて面白いのでおすすめです。
おすすめグルメ
岡部夫婦おすすめグルメは、「蜂楽饅頭」。
昔ながらの餡作りが特徴の蜂楽饅頭は、豆が餡子の状態になるまで時間と手間をたっぷりかけて炊き上げます。昔ながらの方法だからこその味わいを楽しんでいただけます。
小豆にはミネラルやビタミンBなど必要な栄養素がたくさん含まれています。
黒あんと白あんの2種類で、おやつや手土産にもおすすめです。
県外からのお友達も大絶賛しているので、天草に来られる際にはぜひ食べて欲しい一品です!
名称 |
水の平焼 器峰窯 |
---|---|
所在地 |
〒863-0002 |
営業時間 |
9:00~17:00(年中無休) |
電話番号 |
090-9608-0837 |
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