こんにちは!アマカラ編集部の荒木です!
こちらでは、アマカラおすすめの商品とそのお店のこだわりや想いなど、取材してきた内容をご紹介していきます。
今回は、自ら地元で採掘する天草陶石や志岐粘土を使い、磁器だけでなく陶器まで手掛けている窯元の「内田皿山焼」をご紹介します。
1970年に蛸壺を焼いていた窯を引き継ぎ、その際に発見された古陶の陶片の発見により内田皿山焼を開窯。
天草の陶磁器の知名度を高めるために振興会を発足させ、2003年には「天草陶磁器」が経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定されました。
国道389号線から少し入るとギャラリーがあり、手頃な日常使いの器を中心に、可愛い柄から伝統的な模様の器まで多くの種類の器が取り揃えられています。
多彩なバリエーションは県内随一です。釉薬(ゆうやく)として使用する天然の柞灰(いすばい)は、自ら柞(いすのき)を育てて作っています。
お話を伺ったのは、内田皿山焼2代目の木山健太郎さん。
開窯に至った経緯やお仕事に関するお話、これからの展望の他に、「豆皿」や「フリーカップ」のこだわったポイントについてお話を伺いました。
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陶石業の長い歴史と内田皿山焼のはじまり
(荒木)まず、内田皿山焼開窯に至った経緯について詳しく教えてください。
元々は陶磁器の原料となる天草陶石を採掘する会社で、明治30年から陶石採掘をしているんです。
1970年に蛸壺を焼いていた窯を引き継いだのですが、先代がせっかく原材料が取れるのに陶石採掘だけではだけではもったいないので、自社で加工して送り出そうと考えたことが開窯に至った経緯です。
いい赤土が取れるということで、当時は瓶や壺、蛸壺がこの辺りでは多く作られていました。
高齢化が進み蛸壺工場をやめるという方がいらっしゃったことと、先代がちょうど場所を探していたことのタイミングが合ったんです。
当時はまだまだ蛸壺の需要があったので、蛸壺作りを引き継ぎながら自社の焼き物作りを始めました。
蛸壺工場を引き継いだ際、作業所やギャラリーを作るために整地をしていたら、古陶の陶片が出てきたんです。
県の発掘調査委員の方に調べてもらったら、象徴的な文様が出てきました。
発掘された陶片の文様から、有田焼(磁器の産地)で一番古いと言われている年代(1650年代)のものであると推測されたんですよ。
これも何かの縁だということで、文様の復活品を送り出したのが内田皿山焼の始まりです。
当初は磁器のみの製作だったのですが、蛸壺にも使われている地元志岐でとれる赤土の志岐粘土や陶石の周りにつく赤土をブレンドして陶器も作り始めました。
実は、陶石は赤土を取って出荷されるので、その捨てていた赤土を使いたいと思ったんです。当時から持続可能な取り組みを行なっていたんですよ。
-陶石採掘から開窯まで長い歴史があったんですね。次に木山さんのこれまでの経歴も教えてください。
私は熊本県天草郡苓北町生まれで、熊本市内の高校を卒業後は東京の大学で経営を学びました。
1998年に京都市工業試験場研修生となり、翌年に同専科生として焼き物を学んだんです。
研修生たちのモチベーション・レベルも高くて、そこでの経験はとても刺激的でした。
釉薬の研究が優れているところでもあったので、釉薬について学んだことや、その手法なども今に活きています。
陶芸修行後は、地元に戻って家業に就いていますが、実は陶芸以外に会計事務所で働いたりもしていました。
-経営の勉強に陶芸の修行と様々な経験があるんですね。どうしてこの仕事に就こうと思ったのですか?
生まれが天草ということもありますが、やはり天草が好きなので天草を売り出す仕事がしたいなと考えていたんです。
大学生の頃にどういう形で天草に戻るべきかよく考えていました。
子供の頃から天草の自然の中で働くことに興味を持っていて、海で遊んだりしていたこともあったので、もしこの仕事をしていなかったら海洋学者を目指していたかもしれません。
陶磁器作りだけじゃない!木山さんの仕事の流儀
-今ではその夢を叶えて、こうして天草の魅力を広めていっている姿が素敵ですね。
次にお仕事についても伺いたいのですが、仕事をしていて嬉しいことや大変なことはなんですか?
大変なこととしては、陶磁器作りは特に水分に対してとても繊細なので天候に左右されやすいことです。ちょっと天気の悪い日や湿度が高い日が続いてしまうと、納期に響いてきます。
原材料も自然のものを使っているので、品質がぶれてしまうこともあります。
わかっていてもやはり毎回感じるのは、管理の難しさです。経験値と過去のデータ分析でうまく管理する事が重要になってきます。
もちろん嬉しいこともたくさんあります。
私はイベントなどを開催する時に、なるべく店頭に立つようにしているんです。
直接お客様と関わる機会にもなって、お話もできるし、ダイレクトに評価を知ることができます。
こうして生の声を聞くことができるので、お客様の要望に応えられる窯でもあるんですよ。
-お客様の声も聞いて日々進化されているんですね。他のお仕事についても教えてください。
陶石業については、採掘した陶石を陶磁器の産地や窯元に販売しているのですが、有田には原石を送っていて、京都の窯元には土にして送っています。全ての工程で販売をしています。
また、磁器には電気を通さないという性質があることからガイシにも使用されています。
品質管理はかなり慎重に、分析もしっかり行なっています。
コロナ禍で、有田や波佐見などの割烹食器業界自体が縮小してしまったので、陶石出荷も厳しくなっているのが現状です。
海外展開して、陶石の販路拡大も行っていて、インドネシアやスリランカへ陶石輸出もしています。
他にも、採掘する時に多く出る窯業には使えない陶石があり、これまでは捨てていたのですが、水捌けがいいので庭石として園芸材料で売り出しています。
こうして新たな売り出し方をすることで、採掘する陶石全体の価値が上がりました。
商売になるかわからないけど、新しいことに挑戦してみるなど、遊び心も必要だと思っています。
遊び心といえば、私は苓北町の観光協会副会長もしています。
県外から来ている町おこし協力隊とコラボして、苓北町の観光スポット「おっぱい岩」のマグカップ作りもしているんです。
さらに、苓北町教育委員、ハンドボールのコーチなど、いろんなことにチャレンジして楽しい日々を送っています。
-陶磁器作りに陶石業、さらに事業も拡大していて、コロナ禍のピンチをチャンスに変える力、様々なことにチャレンジする姿…、勉強になります!
お仕事について今後の課題に思うことはありますか?
陶石業の方は人材不足が懸念されます。労働力の継承をしていかないといけないと思っていますが、そのためには天草陶石や陶磁器の魅力を高めることが必要です。
天草陶石、陶磁器の魅力を発信し、ブランディングを強化していきたいと思います。
多くの人の目に留まるようにPRして、購入してくれる人を増やして利益をあげることで、労働条件を改善していきたいです。
《オススメ》余白の趣を感じてもらいたい!天草陶石の白を生かした「豆皿」
-それではいくつかの商品について教えてください。まず「豆皿」ですが、商品のこだわりを教えてください。
内側に色をつけるのって珍しいんです。
カラフルな色を中につけることで、天草陶石の白が生きてきます。
こだわりは、「白の生かし方」ですね。綺麗なカラーの釉薬は難しくて、京都で学んだ技術や人脈を活かして作っています。
それから、色が映える形状にもこだわっています。
《オススメ》材料、制作過程、形にもこだわった「フリーカップ」
-次に「フリーカップ」ですが、こちらにはどんなこだわりがありますか?
すべて天草産の材料を使っていることがこだわりのポイントです。
赤土に天草陶石で作った白化粧をかけて作ります。
天草陶石とは違って、温かみのある白になるのが特徴です。
通常陶磁器を作る時は、土を練って、成形して、乾燥させてから削るという工程があるのですが、このカップは乾燥させる前にしのぎを入れる(彫を入れる)ことで、表面に立体感を出しています。
デザインと使い勝手を意識していて、立体感が出ると持ちやすくなるんです。
形状を薄くし過ぎると形状が崩れ、厚くしすぎると重くなるので、形状と技法を合わせるところが難しいですね。
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今後の取り組みについて
-最後に、今後作っていきたい商品や展望はありますか?
やはり原点である天草陶石の白を生かした何かを作りたいですね。
方向性としては、今は食器が多いので食器以外のものに力を入れたいと思っています。
気軽に使える花瓶や、干支飾りなどの幅を広げていきたいです。
有田などの大きな産地では、陶磁器も大量生産になるのですが、天草の窯元は量産できない分、少量での生産にも対応できることが強みだと思っています。
そうしたところにもビジネスチャンスを見出していきたいです。
取材を終えて
高校から天草を出て、東京、そして日本の産業の中心である京都で学び、いろいろな経験を積んできた木山さんのお話は、とても興味深くおもしろかったです。
最初は緊張しましたが、とても丁寧に詳しく応えてくださったので楽しい取材となりました。
ご実家が天草陶石の会社ということもあり、木山さんはそのおかげで他ではできない経験をさせてもらっているとおっしゃっていましたが、その経験をどう活かすかということを考え、今後の天草陶石・天草陶磁器の未来に向けて、いろんな取り組みに挑戦されている姿がとても素敵だと思いました。
陶石業と窯業の二足の草鞋を履いていて多忙な中、イベントでは自ら店頭販売をし、町の観光協会や教育委員のお仕事、ハンドボールのコーチまでこなし、驚くほどパワフル!そしてそれを楽しんでいる姿が魅力的でした。
今後作りたいとおっしゃっていた花器も楽しみです。
内田皿山焼のお店には、磁器から陶器まで多様なラインナップが揃っていて見応えがあるので、自分好みの陶磁器にきっと出会えるはずです。
ぜひ、直接お店に足を運んでみてください!
名称 |
内田皿山焼 |
---|---|
所在地 |
〒863-2505 |
営業時間 |
8:00~17:00 |
定休日 |
不定休 |
電話番号 |
0969-35-0222 |
SNS |
|
WEBサイト |
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